監査は嫌いではないですが、このまま監査法人に残ってよいか迷っています。
マネージャーにはなりましたが、パートナーになるのは狭き門だということを実感しております。
公認会計士のモモタロウです。
大手監査法人に約10年勤務した後、独立会計士・税理士として仕事をしております。
監査法人の知り合いから、今後のキャリアについての相談を受ける機会がよくあります。
今回は、監査法人に残るのであればパートナーにならない(目指さない)と意味がないということをお伝えします。
現在、大手監査法人でマネージャーからスタッフとして働いている人にとって役立つ情報かと思います。
また、今後、監査法人で働くことを検討している人(会計士受験生)にとっても参考になる記事かと思います。
※中小監査法人では、状況が違うと思いますので、大手監査法人の監査部門に限定して話を進めます。ただし、中小監査法人でも参考になる内容です。
パートナーになると年収、退職金、退職後の待遇が変わる
監査法人での待遇は、パートナーになれるかなれないかで雲泥の差があります。
厳しい言い方ですが、パートナーになれないのであれば、監査法人にいる意味はありません。
「監査報告書にサインして責任を負っているから、それに見合うだけの報酬をもらえる」と言われてしまえばそれまでですが、パートナーになれるかどうかで待遇は大きく変わります。
年収が違う
サラリーでは、パートナー、シニアパートナー、経営層と上がっていくことに2千万円を越えてのアップサイドがあります。
一方で、パートナーの一歩手前のシニアマネージャーレベルだと2千万円に届くということはなく、どこかで頭打ちになります。
退職金が違う
退職金でもパートナーになれば、云千万円と支給されますが、職員レベルだと一千万円以上の退職金が支給されることはありません。
例えば、EY新日本有限責任監査法人の公開されている財務諸表(2020年6月期)を見てみましょう。
財務諸表には2種類の退職金に関する引当金があります。
・社員退職引当金 約160億円(16,075百万円)
・退職給付引当金 約16億円(1,634百万円)
なぜ2種類の引当金があるのだということですが、
・社員退職引当金は、社員(パートナー)向けの引当金
・退職給付引当金は、社員以外の職員向けの引当金
として区別されているためです。
金額にも大きな差があるのですが、
・社員(パートナー)の人数は537人
・職員(パートナー以外)の人数は5,017人
なので、1人当たりでみると
・社員(パートナー)1人あたり 約3千万円(29,934千円)
・職員(パートナー以外)1人あたり 約35万円(325千円)
になります。
退職金で100倍近くの差があります。
もちろん、職員の中には入社間もない人や、公認会計士以外の事務の人もおり、在籍年数もパートナーと比較すると短いという側面もあります。
そのような要素を差し引いても、圧倒的な差があると言えます。
退職後も恩恵あり
監査法人のパートナーには、監査法人を辞めた後にも恩恵があります。
社歴の長い上場企業の社外監査役のポストは、元パートナーの公認会計士が担っているという現実があります。
(天下りと言うと怒られますが、伝統のある企業は社外役員に一種の「格」というものを求めますので、元big4のパートナーですと一定の需要があります。)
・在職中の報酬が高い
・退職金も沢山貰える
・辞めた後の収入もそれなりに補償されている
という、監査法人のパートナーは好待遇を得られる地位にあります。
パートナーになるための要件 英語はできて当然
それでは、監査法人のパートナーになるにはどうすればよいのでしょうか。
20年以上前であれば、監査法人のパートナーになるには、そこまで難しい話ではなかったです。(優秀でなくてもパートナーになることができたと言われています。)
時代が変わり、今は監査法人のパートナーになるにはかなりの狭き門になっております。
パートナーになるための要件として、
・地頭の良さ
・ストレートで昇格している
・法人にとっての重要クライアントを担当している
・高い英語力(駐在経験あり)
・営業力がある
といったことがあげられます。
優秀な人が集まって競争しているのに、高い要件を求められて競争しているので大変な世界です。
例えば、「駐在経験あり」というのは、昔であればアピールポイントになりました。
しかし、現在ではパートナー昇格候補者の大部分が駐在経験ありで、特段のアピールポイント(加点要素)にはなりません。
また、パートナーに昇格するには、現在のパートナーに引き上げてもらう側面があるので、いわゆる「政治力」ということも必要になります。
パートナーになるには営業力も必要
ここでは上記の要件のうち、営業力についてお伝えします。
監査法人にいるとマネージャーまで営業的な要素は、ほぼ求められません。
公認会計士を目指す時点で、「営業とか無理」と最初から苦手意識を持つ人もいると思います。
監査法人の営業では、テレアポして新規のお客さんを獲得するようなことは求められません。
営業手段としてはセミナー営業もありますが、一番成約確度が高いのは、紹介案件でしょう。
コンサルティング会社、証券会社、印刷会社、監査法人出身のOB等、いかに案件の紹介を受けるかで変わってくるかと思います。
紹介を受けるには、日頃からの信頼関係をいかに築いているかによってきます。
目の前の監査業務をこなしているだけでは不十分なのです。
監査法人のパートナーになれなくても道はある
「監査法人でパートナーを目指して頑張ってみたがなれなかった(なれない)。」
このようなケースは多くあると思いますし、今後も増えてくると思います。
だからといって、会計士人生が終わる訳ではないです。
転職や独立で監査法人に残ってパートナーになるよりも
・充実した仕事をする。
・生涯賃金を上回る
といったことは幾らでも可能です。
そもそも、監査法人を辞めた人であまり不幸になった人は、私の周りにはいないです。
監査法人でのキャリアに挫折したとしても、幾らでもリカバリーが可能なのだということを忘れないで欲しいです。
まとめ
今回は監査法人に残るのであれば、パートナーにならない(目指さない)と意味がないことをお伝えしました。
監査法人のキャリアを継続するか悩んでいる人にとっては、転職エージェントに登録して面談してみることをおススメします。
おススメの転職エージェントについては、こちらの記事をご参照ください。
今回の記事が皆さまのキャリアの参考になれば幸いです。